2020-01-01から1年間の記事一覧

四年

クリスマスだ。マフラーを巻いたカップルが、夜の町並みを歩いている。小ぎれいなコートを着て、ぎゅっと、お互いの手を握りしめあっている。俺は、そんな景色を眺めながら、今年も、自転車を漕いでいた。スーパで買った、牛乳と鶏胸肉を、カゴに入れて、走…

僕は赤信号を無視して向こう側に渡った

雨が降っていた。交差点で信号を待ちながら、夜の光を見つめた。競輪場から、ヨレヨレのジャージを着た小汚いおっちゃんが出てきた。きっと負けたのだろう、酒のせいか、ふらふらとした足取りは非常におぼつかなく、皺だらけの口元は妙に緩んでいた。まるで…

22歳の九月

映画を見て、涙を流したのはいつぶりだろうか。昔、親父が、タイタニックを見て、一人部屋で泣いていた。あの時は、分からなかった。愛とか、時間とか、チン毛も生えていなければ、自意識さえも芽生えていなかった。 今日は、買い物を終えた後、夕方くらいか…

秋雨に諦めて

煙草をやめようと思ったが、2日が限界だった。机に転がったニコレットが、俺に、乾いた目線を送ってくる。 何となく吸い始めた煙草だったが、今では完全に、C10H14N2に依存している。 親父も、母も、昔は、煙草を吸っていた。家族に料理を作り終えた後の換…

Everythingを引きずって

一週間ほど、実家に帰っていた。 昔家族でよく行った回転寿司屋がいつの間にか更地になっていたり、ラーメン屋のシャッターが閉まっていたり、寂れた街は、ちょっとした時間の風を、真に受けていた。通学路にあるラブホだけが、あいも変わらず、眩いネオンの…

One Step Closer

昨日、秋に汚れた女の子に、久しぶりに連絡を入れた。 「帰り道、ちょっと散歩しようよ」、と。 会いたかった。 何も変われてない。瑕疵だらけ、前より更に、かっこ悪くなった。自信なんて、ずっとない。でも、、、でも、会いたかった。 「終わる時間が、ま…

HP

一週間前ほどの話になるが、ようやく院試が終わった。運よく、推薦の枠に入ることができ、口頭試問という簡単な面接のみだった。今週中に結果通知が届く予定である。 自分が、今研究しているのは、プラズマによるメタン改質というもので、簡単に言えば、エン…

いつも星を落としていくあなたへ

謹啓 いつも星を落としていくあなたへ。 毎回、拙い記録を読んでくれてありがとう。今日はとても暑かったですね。 文面拝読いたしました。コメントは消えてましたが、メールには残っています。 メールにはすぐに気がついたのですが、なんと返したらいいか、…

大学サボって陰毛

昨日、家に帰ってきたら、鼻汁が止まらなくて、なんとなく体が怠かった。寝るぐらいの時間に、鼻汁のピークが来て、なかなか寝付けなかった。後架のちり紙のせいで赤くなった鼻がヒリヒリとして、噴霧薬をぶち込んだり、煙草を吸ったりと、すったもんだやっ…

わらわら

掃除をして、洗濯をして、髪を切って、買い物に行った。MARVELのヘルメットをかぶった少年が、必死で小さな自転車を漕いでいた。ペダルを踏み込むたびに、虫かごがカラカラと揺れて、後ろを歩くお母さんの持つ虫網が、青い空をすかしていた。気づいたら、夏…

箱庭

実験計画の打ち合わせをするために、教授の部屋に向かった。ノックをし、返事を確認した後、静かにドアを開けると、老眼鏡をかけた教授は、画面が何個もあるパソコンに向かって、カタカタとキーボードを叩いていた。 天井まで届くような勢いで積み重なった有…

女体への希求

真昼間に勉強机に向かいながらひとり虚しく精液を吐き出した後、粘ついたちり紙を後架に捨て、換気扇を見上げた。ドアの上の小窓からさす、曇った春空の光が、弱々しく、落ち込んだ膝を照らしていた。 度がすぎる昼寝をした後、筋トレをし、シャワーを浴び、…

いい天気だった

今日は比較的早くに朝起きたものの、何もやる気が起きず、徒然にタバコを吸いながら、換気扇の下で、しばらく音楽を聞いていた。せっかく、コーヒーを淹れたのに、飲もうとしたら、もうほとんど冷めていた。重い腰を上げ、洗面と、歯磨きをすませると、もう…

面白かった映画 1

最近見た映画の中で面白かったものを書いておく。本当に面白かった映画は、こんな記録に残さなくても、しっかりと記憶に刻まれるはずだが、まぁ、感想とコーヒーは熱いうちにということで。できればシリーズ化したい。 本題に入る前に、近況を少し書く。何…

アジフライ

いつもより早めに布団に入ったことが、かえって、悪かったようで、浅い眠りを繰り返し、結局、意識を失ったのは、夜中の3時を回っていた。 5時半、アラームで目がさめる。頭がぼやけ、体は重い。緊急事態の最中、日曜の早朝に、埼玉からやってきて、彼らは…

君はいつも過度に未来を悲観して

水がなくなった。財布をポケットに押し込み、寝間着の上に、上っ張りだけを羽織い、壊れかけのクロックスを引っ掛け、外にでた。夕日は見えず、曇り空が頭上を覆っていた。近くのスーパーで水と、串団子を買った。無性に、甘いものが食べたかった。 レジを待…

日曜の朝

日曜の朝が好きだ。日頃は聞こえる、黄色いはしゃぎ声も、青いおはようございますも、灰色の喧騒も、この時だけは、聞こえない。風が緩やかに流れ、時間までもが、淀んでいるかのようだ。晴れていたら、なおのこと気持ちが良い。カーテンを半分だけ開けて、…

四月

昼過ぎに起きて、冷蔵庫を開け、カルピスの飲みさしを取り出し、それをラッパ飲みしながら、カーテンを開ける。汚たない空を見上げながら、ゲップをして、大きく伸びをする。台所に向かい、換気扇をつけ、灰皿の中をかき分けてシケモクを探す。ちょうどいい…