僕は赤信号を無視して向こう側に渡った

 

雨が降っていた。交差点で信号を待ちながら、夜の光を見つめた。競輪場から、ヨレヨレのジャージを着た小汚いおっちゃんが出てきた。きっと負けたのだろう、酒のせいか、ふらふらとした足取りは非常におぼつかなく、皺だらけの口元は妙に緩んでいた。まるで、自分と社会を笑っているかのような、そんな顔だった。おっちゃんは、何食わぬ顔で赤信号を無視し、向こう側に渡って行った。いつからか社会に迎合してしまっていた僕は、信号を待ちながら、「ダメな大人だなぁ」と思った。でも、そのおっちゃんにどこか憧れを感じている自分もいた。みんながみんなロックスターのように自由に生きることはできなくて、ほとんど全ての人々が、どこかで妥協しながら、我慢しながら、ありふれたなんでもない日常を守るために、ありふれたなんでもない日常と必死で毎日闘っている。朝起きて、自分を奮い立たせて職場や、学校に行っている。そんな人たちに比べれば、このおっちゃんは何倍も自由で、幸せそうに見えた。ダサいけど、かっこよくて、でもなんだかちょっと悲しくて。おっちゃんは、信号を渡りきると、公衆電話の横でおしっこをし始めた。10月の冷たい雨に紛れた放物線は、僕たちが必死で守っている世界をいとも簡単に打ち破った。僕は赤信号を無視して向こう側に渡った。

 

 

 

 

 

久しぶりに日記を書いてる気がする。もはや日記としての体をなしていないが、まぁ良いだろう。

 

 

 

研究室がいよいよ本格的に忙しくなってきた。朝学校にきて、黒魔術のようなわけのわからない実験をやって、気づいたら夜になってる。家に帰ってきたら、部屋は散らかっていて、煙草を一本吸ったら、その後はしばらくなんもできず、ヤニ臭いベットの上で携帯を眺め続ける。そしてまたいつのまにか朝が来て。

 

 

 

未だに1000円カットで髪の毛を切って、高校生の頃から着てる上着を羽織って、お母さんに買ってもらった靴を履いて、あばらは浮いていて、肌は荒れたい放題で、バイトをクビになったのに煙草は吸って、夜な夜な異常殺人鬼の史記なんか読んで、、、、、客観的に書いたら、こんな奴に、恋人は愚か、友人すらできるはずはない。昼休みの時間に、同期はみんなで飯に行っているのに、俺だけは声すらかけられなくて、換気扇の下で、煙草を吸っている。

 

 

 

 

悲劇的であればあるほど喜劇的、とはよく言ったもので、ほんと笑えてくるよ。普通になれなくて、普通を嫌って、普通の反対側のものにばかり、傾倒して、自分はセンスがあると、周りの奴らはバカだと思い込んで、自分を守るために、必死で知識ばかりつけた。そうして、出来上がった自分の城は、本当に脆くて、見掛け倒しの、中身のないハリボテだった。今は何もなくて、ただ乾いた風が空っぽの心に吹くばかり。

 

 

 

 

 

 

枯れていく