女体への希求

 

真昼間に勉強机に向かいながらひとり虚しく精液を吐き出した後、粘ついたちり紙を後架に捨て、換気扇を見上げた。ドアの上の小窓からさす、曇った春空の光が、弱々しく、落ち込んだ膝を照らしていた。

 

 

 

 

度がすぎる昼寝をした後、筋トレをし、シャワーを浴び、飯を作り食った。最近は、爽快な疲労を求めて、筋トレをまた始めた。きっと、一週間後にはやめているだろう。今夜の献立は、もやしと鶏胸肉の炒めもの。味付けは塩胡椒のみという、海外ファッション並みの潔さである。結句、料理などというのは、ファッションだと思うのである。

 

 

 

 

思えば、もう、二ヶ月以上、一人で飯を食い続けている。外食もせず、淡々と、糞をこしらえ続けている。味がしない飯、といえば、少し大げさだが、味気ないというには十分だ。今日の白米の炊き加減は、少し柔らかめで、美味しかった。

 

 

 

 

 

この期間に、己の中で高まったものといえば、女体への希求ぐらいであり、社会的な観点においては、蟻の一歩ほどの成長もしていないと思う。閉塞した状況のなか、自己を磨き、目標に向かってたゆまず努力している人を見ると、素直に尊敬する。

 

 

 

 

 

ぽってりと丸みを帯びた大福のような乳、滑らかな白い肌、艶やかな髪、妖艶と光る唇。控除だとか、査定だとかいう、小難しい英単語をインテリぶって眺めてもいても、頭の中に浮かぶのは、そんな煩悩ばかりで、気づけば、単語帳を放り投げ、つくられた交わりを、見つめている。そして、果てた後にやってくる空虚な現実が、静かに俺に孤独を言い渡す。結句、お前が毎日必死で涎を垂らして眺めているのは、どこまでも、絵に描いた餅、どこまでいっても、うたかたの空中楼閣なのである、ということを、まじまじと知らされる。

 

 

 

 

 

すると、女体への希求が、熱を帯びて、俺の中で渦巻く。あの柔らかそうな、暖かそうな、体に触れたい、あの温もりの中で、泥のように眠りたい、という、熱した鋼のような欲求が、心に焼き付いて、焼き付いて、しまいには、灰とかす。疲れ切って、俺は、布団に横になり、ぼやけた世界の中で、虹のような夢を見る。

 

 

 

 

 

 

ずっとそんな毎日だ。

 

 

 


15 Years Ago - 78/92 - Ace Combat 5 Original Soundtrack