いつも星を落としていくあなたへ

謹啓

 

 

いつも星を落としていくあなたへ。

 

 

毎回、拙い記録を読んでくれてありがとう。今日はとても暑かったですね。

 

 

 

文面拝読いたしました。コメントは消えてましたが、メールには残っています。

 

 

 

メールにはすぐに気がついたのですが、なんと返したらいいか、遅疑逡巡としているうちに、すっかり夜の帳が下りていました。僕は、夜にならないと、うまく言葉が出てこないタチなのです。すいません。

 

 

 

「刺激が欲しい」、とのことでしたが、僕はそれが、すごく、曖昧で、不透明に感じてしまいました。現状に満足している人が、呟くような言葉ではないからです。

 

 

 

 

昔のあなたは、いつも不満気でした。上司に、社会に、友人に、誰彼構わず、不完全燃焼のガラスを投げては、いつも自分ばかり傷ついているようでした。ですが、レトリックを用いずに、ただひたすらに、ちっぽけな心情を吐露する、その文体にどこか惹かれたのを覚えています。そこには、いつも、等身大の新人OLがいました。

 

 

 

時も移ろい、駆け出しだったあなたも、先輩になり、ダメな後輩ができました。そして、恋人ができました。大好きな人との、蜂蜜のような日々を綴るようになりました。あなたの口から、騎乗位という言葉が出てきたときは、思わず、笑ってしまいました。先を、越されたな、という、敗北の自嘲です。

 

 

 

 

ですが、恋人ができたらできたで、悩みは尽きないようで、好きだからこそ、不安になり、寂しくなり、でも、やっぱり好きで、、。最近読んだ「砂糖菓子の弾丸は打ち抜けない」という小説に、「好きって絶望だね」というセリフがありました。両思いでも、そうですか。

 

 

 

 

青かった言葉も、少しずつ透明を帯びていき、薄かった口紅も、濃くなっていったのでしょう。鮮やかな化粧に濡れた感傷を描くあなたは、どんどん、大人の女性になっていく気がしました。

 

 

 

 

最初は、同じような場所を歩いていると思ってましたが、気がつくと、あなたと僕の距離は、月とスッポン、夜空と地面ほどになってしまいました。僕は、まだ、スタート地点でうつむいて。歩き出せなくて、何も、光が持てなくて。

 

 

 

 

 

そんな僕を見かねて、あなたはいつも夜空から、僕の地面に星を落としていく。暗い暗い日記に星を落としていく。

 

 

 

 

僕とあなたの距離は、夜空と、地面。きっとこれぐらいが、ちょうどいいんだと思います。

 

 

 

 

7/21 

 

 


 

 

 

頓首

 

 

 

 

 

 

P.S

暗闇に浮かぶ星に、あなたの幸せを願いながら。