8月暮れ

 

特筆すべきことは何もなかったが、この一週間を記録にとどめておこう

 

 

夏休みが明け、研究室が始まった。久しぶりに会った指導教員のお兄さんは、何も変わらず、いつも通り朝一番に実験室に来ていて、レーザ機械のメンテナンスをしていた。30代前半、身長は180cmぐらいで、肩幅がかなりあり、ガッシリしている。メガネは掛けておらず、アップパンク風の髪型は、いつもきちんと整えられていて、理系というよりは、体育会系の見た目をしている。この人が俺に、研究のアドバイスや、実験装置構築の手伝いなどをしてくれる。要するに会社でいうところの上司のようなものである。

 

 

初対面の印象(最初に会ったのは2年前の九月)は、どこか今までにない人間のタイプで、怖さ半分、優しさ半分、正直この先やっていけるのか少し不安だった。というのも、俺は、目上の人と話すのが不得意であり、バイト先などでは、度々、いざこざを起こして来た。バイトであれば、嫌になったら、辞めればいいだけの話なのだが、研究室の場合は、そう簡単にはいかない。

 

 

 

それから二年間休日を除いてほぼほぼ毎日、会っているわけだが、どうにも、嫌いになるという感情があまり湧いてこない。これは、これまでの俺にとっては奇跡のようなことであるのだが、事実、そうなのである。なぜだろうか、単純にそのお兄さんが良く出来た人だからなのだろうか、いや、確かにそれもあるだろう。だが、もっと根本的な理由がある。それは、俺自身が変わったからである。どう変わったのかは、明確にはわからないが、ぼんやりと一言で言い表すとすれば、「乾いた」のである。ダジャレではないが。

 

 

久々に稼働させた我が実験装置たちは、そのポンコツぶりを遺憾無く発揮し、まともにデータを取れる状態に戻すのに、二日ほどかかってしまった。また、あの部分がイかれているのだろうと思いながら、工具を扱い、汗をかき、青い空広がる夏の一週間は、朝焼け、黄昏を連なり、金曜の夜へとあっという間に消えていった。

 

 

 

土日は、喫煙と、オナニーと、映画、小説、掃除、洗濯、買い出し、と、いつも通り過ごし、豚バラ炒め(夕飯)の倦怠感にまどろんでいたら、いつの間にかこんな時間である。特に思うこともなく張り詰めたものもない、いつも通りの一週間であった。

 

 

よく聞いていた曲。この曲、5拍子なんだよね。

 

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