日曜の夕方

 

昼下がり、さすがに腹が減ってきた。朝から何も口にしていない。ギターをケースにしまい、パジャマの上に黒のウインドブレーカーを着て外に出る。お散歩日和のいい天気だった。信号を待っていると、ドライブデート中のカップルが見えた。黒い大きな車だった。男の方はわからなかったが、女の方はそこそこに可愛かった。4日連続でシコったからか、頭がぼんやりしていた。「めちゃくちゃセックスするんだろうなぁ」寝癖まみれの後頭部をポリポリと掻きながら、そんなことを思った。鮭、明太子、鳥五目の三種類を買ってコンビニを後にする。信号を待つ。ふんわりとした暖かな日差しが降り注ぐ。目の前を車が通り過ぎていく。ちょっと歩いただけなのに、なんだかもう疲れてしまった。

 

 

女からの連絡は途絶えた。唯一と言っていいほど、好意的に接してくれた人だった。失恋というほどの衝撃はなかったが、それでもやっぱり少し落ち込んた。俺は、どうしてこんなにダメなのだろうか。ため息すら出てこなくて、ただひたすらにギターを弾いていた。どこにも吐き出せない、誰にも言えない心の翳りをメロディに乗せて、誰も聞いてくれない歌を作り続けていた。いつのまにか日が落ちていた。部屋が真っ暗になっていることに気がついて、電球をひねった。一人暮らし7年目。日曜の夕方はいつも物憂げだ。

 

 

 

三日ぶりに髭を剃る。鼻毛を刈り込み、眉毛も整える。部屋も掃除した。洗濯物も畳んだ。食器も全て洗った。ゴミもまとめた。罰を受ける前の囚人が身辺を綺麗にするのと同じように、あらゆる物事を整理していく。嬉しいも悲しいもなくて、ただ生きている。いつか死ぬときも、きっとそんな感じの気持ちなのかもしれない。

 

 

 

風呂上がりに缶コーラを飲みながら、何も映っていない真っ暗なテレビの画面を見ていた。嬉しいも悲しいもなくて。ただ生きていた。