二日目

 

地獄だ。初日さえ乗り越えれば余裕だろ、と思っていたが、全然そんなことはなく、これっぽっちもニコチンホールの苦しみは引くことはないどころか、ますますその苛烈さを増している。昨日はぼんやりとしていた「輪郭のない痛み」が、はっきりとした実像として、脳を揺らしている。「吸ってしまえば、楽になるぜ」と悪魔が耳元でずっと囁いている。

 

 

急に気候が変わった。温度が変わった。寒い。朝、自転車に乗りながら、吸い込む空気が、冷たくて鮮やかで、まるで透明で形のないサイダーの飴玉を飲み込んでいるような、そんな爽快な気がして、本当に気持ちがよかった。死んでいた肺が蘇っていく感じがした。寒空の空気はうまい。好きな季節がやってきた。

 

 

家の前で、鳥が死んでいた。首がもげていた。羽がボロボロで、そこら中に、毛が散らばっていた。きっと、死ぬ前に、のたうち回ったのだろう。秋晴れの光の中で、静かに、横たわっているその首なし死骸を見て、何か、暗示的なものを感じた。何を暗示しているのかわからない。ただ、何かスピリチュアルなものを感じた。ビニル手袋で死骸を拾い、ゴミ袋に入れ、そっと捨て、無茶苦茶な南無阿弥陀仏を心の中で唱えた。俺がおくりびとで悪かったな。

 

 

ニコチン不足を紛らわすために、飴玉を舐めている。ガムはもうなくなった。というか本当に寒い。明日は、絶対お風呂に入ろう。二日目終了。